「思いは伝わる」の理由

「絵本の詩」は「思い」を大切にしています。

思いは伝わる、と思っています。

そう思った出来事がいくつかあります。

ちなみに、人や物事など具体的な対象への憧れを連想する「想い」というよりは、考えや願いを含めた広い意味での「思い」の方がぴったりくる気がしています。

思いを伝えて転身

10年前の2009年、私は実務がしたいという自分の思いを上司に伝えることで、秘書から広報に転身しました。

秘書当時の上司には、自分の考えや思いを直接伝えてくる社員が何人も訪ねてきていました。上司はそうした社員とじっくり話をし、最終的にはその社員を応援することが多かったように思います。つまり、上司はその意欲を買っているように思えました。

その時、私は伝えることの大切さを学びました。自分自身、伝え続けたことで転身が叶ったように、伝えなければそんなことを考えていたことさえ周りはわからない、自分はこうしたいという思いを明確にすれば、その思いは伝わるんだと感じたのです。

広報での最初の大きな仕事でも実感

広報に異動して最初の大きな仕事は、企業広告と会社案内の刷新でした。それまでの広告は、健康そうな家族の写真。キャッチコピーは覚えていません。でも、写真とキャッチコピーがマッチしていない、会社のメッセージにもあまり関係ないものだったことを記憶しています。

そこで、刷新する際は、広告のイメージ(画像)とキャッチコピー(言葉)を会社のミッションや当時のメッセージと合わせることに注力しました。

新しい広告(ちなみにこの広告は10年も使っていただいてとうとう役目を終えたと聞いています)のイメージは、会社案内にも使用し統一感を図りました。製薬会社だったため、「早く元気になってほしい」という願いを込めて折鶴をモチーフに採用したのですが、そのメッセージをまずは社内に浸透させるため、社員に配る会社案内には折紙を入れ、折鶴を折ってもらうプロジェクト*を企画しました。

折鶴の羽には、「患者さんの願いを実現するために、皆さんはどのような思いで仕事に取り組んでいますか?」という問いに対する答えを書いてもらいました。

すると自由参加のプロジェクトであったにも関わらず、社員の6割以上から折鶴が返ってきたのです。羽に書かれた社員の思いはとても心温まるものでした。

企業の広報の仕事は社内の理解と協力がなければ成り立ちません。「きっと伝わる!」と始めたものの、最初はどれだけの折鶴が返ってくるのか想像もつきませんでした。支店長会議や営業所長会議で説明し協力を仰いだり、海外本社の偉い方々からも写真やメッセージで参加していただいたり、できる限りのことはしましたが、それぞれ業務で忙しい中、誰も取り合ってくれなかったらどうしようと本当に不安でした。でも、このプロジェクトの成功から実感したことは、真摯な思いは周りに伝わるし、共感して参加したり、助けてくれる人が必ず出てくるということです。

こうした経験を通じて、私は、本気で考えていること、実現したいことがあれば、きちんと相手に伝えたり、実際にやってみたりすると応援してくれる人がきっと現れると信じるようになりました。

このプロジェクトで社内の皆さんの協力に感動した私は、その後の広報活動でも、担当する製品に対する関係者の熱い思いをしっかりと受け止めて、それが第三者にきちんと伝わるよう、工夫を凝らすようになりました。誰かの思いを伝える広報活動の原点です。

勇気を出して…

自分の思いを誰かに伝えることはとても勇気が要ります。私もいまだに、「こんなことを言って恥ずかしくないかな?」「こんなことをして、みんなにどう思われるかな?」と怖気づく毎日です。

でもやりたい。

そういう気持ちが少しでも残るなら、思い切って伝えてみる。やってみる。

実際、変に思われたかもしれないけれど(笑)、伝えてみると、OKをもらえる、サポートしてくれる、うまくいく。そういう時の方が意外と多いことに気づけます!

 

失敗しても、『おちついて…もういっぺんやれば…きっとうまくいく!』

絵本「わたしとなかよし」のセリフです。

「わたしとなかよし」瑞雲舎 ナンシー・カールソン作、なかがわちひろ訳

 

だから、その思い、思い切って伝えてみませんか?うまくいかなかったら、落ち着いて、もう一度練り直して。今度こそ誤解されないようにわかりやすく。サポートします!

明日もまっすぐ届け!

 

*このプロジェクトについてはMonthlyミクス2010年8月号で取り上げていただきました。

Monthlyミクス2010年8月号

(掲載許可をいただいております。